【平成19年9月定例会】
 今年度新たに創設した親学推進協力制度についてお尋ねいたします。
 昨年12月に教育基本法が改正され、家庭教育について「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するもの」という文言が明文化されました。家庭教育のあり方が、社会全体の問題として取り上げられるようになっています。
 情報は多いが、安心して相談できる人が身近にいない悩み
 親だけに責任を押しつけても、問題は解決できない現実
 名古屋市の状況を見ますと、昨年度の市政アンケート結果では、家庭の教育力が低下しているかとの質問に対して、中学生以下の子供を持つ親の49.4%が低下していると答えております。これに、どちらかといえば低下していると答えた39.8%を加えますと約9割となり、子供を持つ親の多くが家庭の教育力の低下を懸念している状況があります。

 私も毎朝、近所の子供たちに「おはよう」と声をかけるよう実践しておりますが、結構な割合であいさつが返ってこない。下を向いて通り過ぎる子供の後ろ姿を見ると、大変寂しく感じます。

 大人同士があいさつを交わす姿も減ったように思いますし、子供たちに声をかける大人も減ったように思います。子供は大人の背中を見て育つといいますが、まさに現代の大人たちの姿勢が、そのまま子供たちに反映されている表れなのではないでしょうか。

 しかし、親だけにその責任を押しつけて「もっと頑張れ」と言うだけでは問題は解決しません。今の親は、家庭教育に関る情報はインターネットなどを通じて簡単に入手・発信できる状況にありますが、信頼に基づいた相談者と回答者の関係が成り立っているわけではありません。家庭教育に関する情報は多いが、安心して相談できる人は身近にいないといった状況です。現在の親は、子供の教育に自信が持てず悩むことが増えているのではないでしょうか。
 家庭教育を気軽に学び、話し合う仲間を得る機会が必要
 PTAのある役員と話をする機会がありました。「多くの会員に行事に参加してもらうため、知り合いすべてに声をかけても参加者が集まらずに困っている。断られる大きな理由として、仕事があるのでが多い」とこぼしていました。

 共働き家庭の増加といった状況もあり、PTA活動を通じて、同世代の子供を持つ親同士で悩みを相談したり、話し合ったりする機会も減っているようです。今の親には、子供の教育について考えるゆとり、家庭教育について気軽に学ぶ機会、身近に悩みを相談したり話し合ったりできる仲間が必要です。そして、それを支える社会が必要です。
 講演会や親子体験活動など、企業が親学推進制度に協力すれば大きな効果
 教育委員会では、親が家庭教育について学ぶことを親学と名づけ、パンフレットによる啓発やPTAによる家庭教育セミナーなどの事業を進めています。そして本年度から新たに、企業が講演会の開催や親子での体験活動を行い、働く親が親学に触れる親学推進協力企業制度をスタートさせました。多くの企業がこの制度に賛同し、家庭教育の推進に協力することになれば、その効果は非常に大きなものとなるはずです。

 そのために、大企業だけではなく、市内に約12万8000ある事業所の99%、従業員数では約79%を占める中小企業への働きかけを積極的に行うことが重要です。企業の理解と協力を得ることにより、親の学校行事やPTA行事への参加が進み、家族の触れ合いや親同士の交流などが深まることによって、子供の成長に合わせて親自身が成長され、その背中を見て育っていく子供たちが今後どのように変わっていくのかを私は期待しています。
 より大きな効果を得るために、中小企業への働きかけが重要
 そこで、教育長に2点お尋ねをします。
 親学推進協力企業制度について、教育委員会は登録証交付式を行い、15社ほどの登録があったという新聞記事を目にしましたが、現在はどのような状況にあるのか、また制度を進めるに当たって、企業からは具体的にどのような反応があるのか、お聞かせください。

 次に、この制度が大きな効果を上げるためには、中小企業にも積極的に働きかけを行うことが重要であり、より多くの企業が行政と連携して本市の家庭教育を推進していくことが大切です。教育委員会として、本制度を推進するに当たっての今後の方針についてお聞かせください。
市側答弁
教育長:親学推進協力企業制度は本年6月から協力企業の募集を開始し、現在20社に登録をいただきました。ノー残業デーには家族で一緒に食事をすることなどを朝礼や社内報で呼びかける、学校行事やPTA行事へ参加するための有給休暇をとりやすくするための制度を整えるなど、各企業の実情に合わせた親学を推進する取り組みをしていただいております。

 企業が従業員のために家庭教育を推進することは、家庭が安定することで仕事の効率アップにもつながるとともに、企業の社会的役割として大切な視点であるといった、大変心強い御意見もいただいております。一方、全国規模の企業の場合、支店単位での登録は難しいとか、企業にとって従業員の家族に一定の価値観を押しつけるのは難しいといった御意見も伺っているところでございます。

 中小企業への働きかけについては、より取り組みやすい制度とするため、企業との意見交換会を開催し、企業の方々からの御提案や、取り組んでいただいた成果や問題点などの御意見をいただき、内容の充実を図りますとともに、業界ごとの集まりの場などに直接出向いての説明や、中小企業情報センターのメールマガジンの配信などを通じて、より多くの企業に登録していただけるよう努めてまいります。